[ジョジョの奇妙な冒険]連載開始時の印象
ジョジョの奇妙な冒険といえばすでに日本を代表する漫画の一つといえるかもしれません。
その独特なタッチと知略に満ちたバトル。そして壮大なストーリー。
しかし連載開始時の印象はそりゃもうひどいものでした。
今でも鮮烈に覚えている当時を振り返ってみたいと思います。
◇
当時の週刊少年ジャンプの連載陣を見てみると、
キン肉マン、北斗の拳、キャプテン翼…等々、未だに語り継がれる名作が数々とひしめいている堂々たるラインナップ。
ところがその内容などうだったかというと…
- キン肉マン→王位争奪編
- 北斗の拳→修羅の国編
- キャプテン翼→ジュニアユース編
と、いずれも作品として一番勢いがあって盛り上がりをみせていたころをやや過ぎていたような状態となっていました。
パーフェクト超人の死闘も終わり、ラオウは壮絶な死を遂げ、東邦学園との延長に渡る延長戦もとうとう決着がつき、どの作品も、僕たちが胸を熱くしていたころを通り過ぎてしまった後のような状態…。(このころドラゴンボールや聖闘士星矢も連載を開始していましたが、爆発的な人気を博するのは少し先。)
そこでテコ入れのように次々と新しい連載が始まるのですが、どれもこれもぱっとせず、すぐに連載終了となってしまいます。
新しい連載が始まっては終わり、終わってはまた始まる、そんな悪循環が続いていたようにも感じられました。
それでもジャンプ信奉者であった小学生当時の自分としては、常に新連載に大きな期待を寄せるもの。あのキン肉マンやキャプテン翼を超えるような、心を熱くさせる物語が始まるに違いない、と期待に胸を膨らませながら新連載に目を輝かせていました。
そんなある日、予想を超えたとてつもない漫画が、新連載として巻頭カラーを飾ります。
冒頭、第1ページ目から、いきなり美女の惨殺。
そしてその血のりをべったりと面に塗りたくる謎の人物。
残酷描写の規制が今ほど厳しくなかった当時ですら、思わず目をそむけたくなるような悪趣味なえげつなさ。
と、思いきやページを進めれば一転、英国紳士の青っ臭い青春ドラマが幕をあける。
タイトルも、まるで子供向けの絵本であるかのような、いったいどこにジャンプの読者の心を動かす要素があるのか、全く分からないネーミングセンス。
唖然…。
終わった…。
もう自分の大好きなジャンプは終わってしまった…。
キン肉マンもキャプテン翼もこれ以上面白くなりようがなさそうだし、こんなにグロテスクで意味不明な漫画があ新たに開始されるようではジャンプはもうおしまいだ、と、『ジャンプ離れ』を真剣に考えさせてしまう程の印象の悪さ。
でも小学生のなけなしのおこずかいで買ってきた週刊少年ジャンプですので、当然その「変な漫画」も面白いつまらないは別として、しかたなく読むには読む。
ところが毎週毎週相変わらず、まるで教育テレビでも見せつけられているかのような英国紳士の青春ドラマが淡々と続いて行くだけで、面白くなる気配はまるでゼロ。
特に、主人公の敵役のいじめ方が結構えげつなくて、読んでるだけで胸糞が悪くくなってくる始末…。
ところが!連載も3か月も過ぎたころ、その印象が大きく変わる事件が発生するのです。
それは主人公の敵役が、スラム街で浮浪者に仮面をかぶせて惨殺するシーンでした。
連載開始時に強烈な印象があったからよく覚えている、あの仮面。
と次の瞬間、殺したはずの浮浪者が蘇り、手を伸ばして襲いかかってくる。
そしてその手が壁を突いた瞬間!
壁にクレーター!
これは本当にびっくりしました。
こういう話か!と、心底震えました。
で、ここから先、往年の小学生ジャンプ信奉者はこんな風に想像するわけです。
“なるほどなるほど、ほんで古代人の恐怖を知った敵役が改心して、主人公と協力しながら謎を解き明かすのかな、そういう冒険が始まるのかな”
とかなんとか…。
もちろん作品の方はそんな安〜い発想を平然と超越し、この敵役はこの後も長~く語り継がれる名悪役として猛威を奮うことになるのですが…。
とにかくこの作品、連載時はどうなって行くのかさっぱり予測がつかなくて、それまでのマンガのパターンを超越した、全く先の読めない面白さがありました。
特に主人公の師匠が体を分断されてしまうシーンなどは「嘘だ!」とあまりの衝撃に呆然としたのを覚えています。
今まで見たこともない変な漫画は、今まで見たことがない面白い漫画として、多感な子供時代に深く刻まれることになりました。
自分が初めて買い揃えたマンガも『ジョジョの奇妙な冒険』です。
◇
あの衝撃的な連載開始から20年、掲載誌を変え、jojoワールドはもはやマンガ史上にきらめく作品として、これからも語り継がれて行くことになるでしょう。
その連載の始まりに立ち会える事が出来たことは貴重な経験であったと思います。
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