銀河鉄道999がAI社会に警鐘を鳴らす『石の花』

機械が知性を持ち、人類社会を脅かす物語。

そこには『2001年宇宙の旅』『ターミネーター』『マトリックス』等々、数多くの名作が誕生しております。

ただ、それらの名作にひけをとらず、全く異質の独特な切り口で描いた作品が、松本零士さんの代表作『銀河鉄道999』の一つとして描かれています。

それがこの『石の花』。

銀河鉄道999号の停車駅「惑星モザイク」は、「アンドロメダ固有の文明と銀河系の文明が混血した素晴らしい星」と絶賛される場所。

ところが主人公の鉄郎にとっては、どうみてもただの古代遺跡群、石ころの寄せ集めにしか見えません。

納得のいかないまま、殺風景な石のホテルにチェックインすると、突如足元の石が崩落し鉄郎は地下に閉じ込められてしまいます。

ところ変わって地上の広場では、若者が老人を取り囲んで公開処刑の真っ最中。

この老人が惑星モザイクに石の文明を築いた人物「ヒネマイオス」。なぜかひどく嫌われています。

メーテルがこの老人を救いだし、鉄郎を救出しに行くと、鉄郎は物を言う石たちによって小さな石をならべさせられていました。

ヒネマイオスはとっさに鉄郎が並べている石の配列を壊すと、すぐさま鉄郎たちを見晴らしの良い高台に案内すると、眼下には広大な回路が見渡す限り広がっています。

ヒネマイオスが言うには、ある時から人工的に造った石が人間たちを動かすようになり、巨大な回路を作らせるようになったとのこと。

そしてその回路が完成した暁には、惑星全体が完全な鉱物生命体となり、人間など皆殺しにしてしまうだろうと。

事情を知った鉄郎は石たちのエネルギー供給部を破壊し、その陰謀を完全に阻止するのでした。

別れ際、ヒネマイオスは言います。

「石がなんでも与えてくれるので、この星の人間は考えることをしなくなった。考える人間を嫌って消していった…」

「はじめは小さな石の回路でささやかなことをさせていたのだが、だんだん回路をつないでいくことで大規模にしていった…」

「そして人間は何もしなくて暮らせるようになった。」

「石の花」のヒネマイオスは「歴史上最大の馬鹿」として記録に残された…というモノローグを残して、物語は締めくくられます。

「考える人」が作り上げた、「考えなくても良い社会」。

結果、「考えない人たち」が多数を占め、「考える人」が迫害される社会。

“人の英知”とはなんなのか。

『知』は、どうあるべきなのか。

この「石の花」は、そんな問いを私たちに投げかけているかのようです。

ところで、人工知能「AI」は日々飛躍的な進化を遂げており、2019年現在では「オセロ」「チェス」「将棋」「囲碁」といった知的競技の世界では、既に人工知能が人間を凌駕したとされております。

さらにこの先2045年には、人工知能が人間を凌駕する転換期『シンギュラリティ』の訪れが予想されているとも言われています。

刻々と差し迫るその時を、我々は恐怖を覚えずに迎えることが出来るのでしょうか。

コンピューターをつかさどる中枢、CPUのことを、技術者達の間では「石」と呼ぶそうです。

もしかすると私たちは既に「石」によって操られ、巨大な回路を作り上げている最中なのかもしれません。

【DATA】銀河鉄道999『石の花』は 小学館ビックコミックスゴールド版:10巻/小学館業書版:9巻 /少年画報社ヒットコミックス版:15巻/に収録

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