ラグビー小説の秀作『GO Forward!(ゴーフォワード!)』
ラグビーワールドカップが開催し、日本全国が沸騰しております。
先日は世界ランキング2位のアイルランドを撃破するというとてつもない快挙を果たし、ラグビーは今、日本中の関心の的になっているようです。

でも、そうはいっても「ラグビー」は今まで国内ではなじみが薄かったスポーツ。
これだけ話題になっているにもかかわらず、そのルールもいまいち理解されていないようです。
より身近に感じてもらえる為に、ラグビーを取り扱った漫画やアニメ、ゲームといった親しみやすいコンテンツがあればよいものですが、どういうわけだか「ラグビー物」はなかなかヒットさせるのが難しいようで、業界では「鬼門」と避けられているとの噂もあるみたい。

そんな「ラグビー物」の中で、ひときわ秀作と呼び声の高い「小説」があることをご存じでしょうか。
それがこちら、『GO Forward!(ゴーフォワード)-櫻木学院高校ラグビー部の熱闘-』(著・花形みつる)

物語は、とある進学校に赴任してきた新人教師が、理事長の命令で新たにラグビー部を創設することになり、ゼロから部員を集め、特訓し、最終的には県内の強豪校と渡り合えるようになるまでを描いたもの。
その骨太の青春群像は読み応え十分。
というわけで、このラグビー小説の秀作 『GO Forward!(ゴーフォワード) 』を3つのポイントでご紹介します。
1:読めば分かる!ラグビーという競技の全容
物語は「部の創設」というゼロスタート。なので当然部員はほぼ全員ドシロウト。
作品では彼らがラグビーという競技に出会い、体得し、強くなるまでの過程が余すところ無く描かれております。
つまりこの物語、読むだけで部員たち一人一人の体験を通じてラグビーという競技の全容を、まるまる知ることができるのです。

しかも作者はこの作品のために3年間、実際の高校ラグビー部に密着取材をしたとのことで、その力強さや特有の「熱気」まで、ラグビーという競技性質を内側からまるっと鮮やかに描き出しております。
特に部員たちが『ラグビー』を目の当たりにし、体得してゆく様は迫真のリアリティ!
まるで生徒たちと一体になって、ラグビーという競技にどっぷり入り込んでしまうような魅力があります。

2:胸が熱くなる!熱血体育会部活ドラマ
ラグビーはサッカーと同じくグラウンド球技ではありますが、そのコンタクトプレイの激しさは全く異質。全力疾走してくる巨漢を身一つで食い止め、倒し、ボールを奪い、進撃を重ねる。まるで合戦さながらの様相。
そのような競技ですので、もちろん生半可な取り組みをしていては大変危険なわけで、練習はもれなく超ハードになります。
ただ、そうした状況に必死でくいつき、励ましあいながら強くなってゆく部員たちの姿はただただ「熱い」の一言。

特にこの作品の場合、試合よりも練習の方がぐっとボリュームが多くなっており、現実の「部活」の姿を浮き彫りにしているかのよう。
ラグビー小説と同時に「部活」小説としての要素も強く、いわゆる体育会系といった社会に身を置いたことがある人であれば必ず共感を覚えるはず。
懐かしさで身が震えてしまうかもしれません。

3:深刻なリアル!高校ラグビーの状況
ワールドカップの影響によりラグビーの熱気が高まっておりますが、その陰でなかなか人気を維持してゆくことが険しい現実があるようです。
というのも、その競技人口を支える高校ラグビーの部員が年々減少しており、 県によっては1回戦即決勝戦というところもあるとのこと。
作品ではこうした実情についてもひしひしと描かれております。

これも3年間、高校ラグビー部に密着取材を続けてきた筆者だからこそ描ける現実なのでしょう。
ラグビー人気が高まる一方で、こうした現実に対しての問題提起を投げかけている側面もあります。
もしかすると作品の骨子である「ラグビー部の新規創設」は、全ラグビー関係者の願いなのかもしれません。

まとめ
ということで、 ラグビー小説の秀作 『GO Forward!(ゴーフォワード) 』
結構なボリュームを一気に読み勧めてしまいます。
かつてはキャプテン翼がその熱気を盛り上げたように、またはスラムダンクがその競技人口を押し広げたように、少年少女の動機に創作はつきもの。
ラグビーの行く末を広げる為にはやはり「魅力溢れた面白いラグビーコンテンツ」は必須。
その一端として、本作品が大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。
ラグビーファンは勿論、ラグビーを知らない人も、これから知りたい人にも是非、お勧めの一冊です。

『GO Forward!(ゴーフォワード)-櫻木学院高校ラグビー部の熱闘-』
著・花形みつる /ポプラ社
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