生かけじくって何?

生カステラ、生どら焼き、生マシュマロ。
広島に行けば生もみじ。
2018年紅白歌合戦は生米津玄師…。

巷には「生」のつくものがあふれているようです。

そんな中、世にも珍しい「生かけじく」というものがあることをご存知でしょうか。

雄大かつ繊細、唯一無二の生かけじく。
その全容をお伝えしたいと思います。

生かけじくがあるのは出雲の国、島根県は足立美術館。

足立美術館は島根県出身の実業家、足立全康さんがその財を投じて設立した美術館です。
所蔵する作品は横山大観、北大路魯山人といった近代日本画壇、陶芸作品が主となりますが、この美術館の最大の魅力はなんといっても敷地に広がる日本庭園。

その閑雅な風情は世界的にも有名で、米専門誌 『The Journal of Japanese Gardening 』では16年連続(2003年から継続)でTOPを独占し、フランスのミシュラングリーンガイドでも最高評価の三ツ星に輝いております。

世界にその名を轟かせる足立美術館。
今回ご紹介する「生かけじく」はこの最奥部にあります。
早速行ってみましょう。

館内にはいると、中庭に故・足立全康さんが我々を出迎えてくれます。

と、この銅像、足元をみて見ると。

これはもしや…

北村西望先生‼︎

これは驚きました。

自分はなぜか北村西望先生の作品をみるとワクワクしてしまうという、意味不明な性癖を持っていまして、思わずテンションがクライマックスに。
(北村西望先生については後日このブログ触れたいと思います)

正直、この美術館に着くまでは、「へへん、どこぞの金持ちが贅を尽くしてこしらえた庭園だって?」と、思うところもあったのですが、いやまさか北村西望さんの作品に「どうぞご覧になってくだされ」と言われてしまうと「へへえ、ほんじゃちょいと覗かせて頂こうかしらん」とも思いたくなるもの。いざっ!

生かけじくがあるのは館内の最奥部。

ただ、それまでに思わず足を止めずにはいられない見事な庭園が我々を迎えてくれます。

正直、私は写真の腕はさっぱりであります。
カメラもスマホですし、何のテクニックも知りません。

なのに、それなのに、スマホを差し向ければまるで絵葉書のような美しい写真がフレームに収まってしまうのです。

誰がどう写真に収めてもきちんと絵になってしまう。
これこそ、誠に計算され、構築された景観のなせる技なのではないでしょうか。

もちろんそんなゆるーい評価が妥当でないことは承知の上であります。
ですが、どんなに芸術に疎かろうと無知であろうと、誰でもその様式美を感じとることができるリアルがそこに現れているようにも思われます。

そしてその概念をさらに分かりやすく表現しているのが、これからご紹介する「生かけじく」なのです。

それがこちら。
館内最奥部に設置されている家屋の軒先に案内板。

そして室内をそっとのぞきこんでみると…。

分かりますでしょうか。

要するに、床の間の奥の壁をくり抜いて、その向こう側の風景美を掛け軸に見立てているのです。

天然の景色をフレームに区切るだけで、美術作品が表現される。
しかもその作品は季節とともに色を変え、風とともに、雲とともに、時とともに趣を異にしてゆく。

なんと壮大なアートでしょう。

ちなみにこの掛け軸、裏手に人が回れるようになっておりまして、写真を押すタイミングをあやまると…

このようになってしまいます。

いや、これも生かけじくの醍醐味。 本当はこんな内覧順路にしない方がいいのに、あえて人の出入りを可能にしたことで、遊び心を取り入れたのかもしれませんね。

今回ご紹介した「生かけじく」は足立美術館の名物のひとつとなっています。

ですが、足立美術館の最大の魅力はあくまでも施設の周囲の山々までを含んだ雄大な風景そのものにあります。
その様式美は、まるで来場者をアートの力ですっぽりと覆いつくしてしまうかのよう。
そこに身を投じて初めて感じ取ることができる、圧倒的な美の迫力を是非、体験してみてはいかがでしょうか。

後方の山々も美術館の管理下だそうです。

足立美術館にはこのほかにも沢山の見どころがあります。
とくに国内最大ともいわれる横山大観の所蔵は必見。

足立美術館HPより( https://www.adachi-museum.or.jp/

山陰地方にお出かけの際は是非立ち寄りたいオススメのスポットです。

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