ボクシング漫画の知られざる名作「汚れた顔の天使」

あしたのジョー、はじめの一歩、がんばれ元気…。
ボクシングを題材にした漫画には漫画史に残るような名作が数多く誕生しています。そんな粒揃いのボクシング漫画の中で、あまり世に知られていない極上のひと品をご紹介したいと思います。

作品名「汚れた顔の天使」

汚れた顔の天使 表紙
吉田聡さん(Twitterより)

作者は『湘南爆走族』『荒くれknight』でおなじみの吉田聡さん。

え、そんな作品聞いたことがない?氏の作品で検索しても出てこない?
それもそのはず。
実はこの作品、に少年サンデー誌上で連載されていた探偵物語「DADA!」のエピソードの一つなんです。

なんだ、ボクシング漫画じゃないじゃないかって?

いえいえ、決してそんなことはありません!
そのドラマ性といい、登場人物の魅力といい、何よりボクシングシーンの迫力といい、まぎれもなくボクシング漫画としての完成度が極めて高い作品なのであります!

それでは早速作品を紹介していきましょう!

港町横浜に事務所を構える「曙探偵事務所」。ここに 逢多紋次郎(あいだもんじろう)という 一人の若手探偵がいます。

逢田紋次郎

調査の腕はピカイチ。腕も度胸もありますが、きざで女たらしなのが玉に傷。曙探偵事務所の2枚目担当。
彼がこのストーリーの主役になります。
(本編の主人公は新人探偵:段田源字ですが、この一篇については端役となっています。)

ある日、この曙探偵事務所にとあるボクシングジムの会長が訪ねてきます。
依頼内容は…

といったもの。
なぜなら、手塩にかけて育てた若手のホープが、この新しくできるボクシングジムに引き抜かれようとしているからなのです。
気の毒な話ではありますが、身勝手といえば身勝手。
曙探偵事務所としては依頼を丁重に断り、お引き取りをお願いします。

ところがジムの会長が、出口で逢多紋次郎と鉢合わせた瞬間、一触即発。

実はこのボクシングジムの会長と探偵・逢多紋次郎の間には過去に深い因縁があったのです。

2年前、逢多は将来を嘱望されたボクサーでした。
連戦連勝、ジムは盛況、さらにはジムの娘さんと公然の仲となり、順風満帆の日々。

ところが逢多は世界ランキングのかかった大一番の試合を目前として、突然行方をくらませたのです。
謎の失踪。周囲を混乱させたまま、逢田はボクシング会から永久にその姿を消したのでした。

理由については

とうそぶきますが、真実は

ようするに怖気図いて逃げ出しただけというもの。

あまりにも情けない過去の失態。
ずっと引きずっていた黒歴史。
逢多はこの機会に会長の依頼に応えようと立ち上がります。
早速ジムにのりこみ、引き抜かれようとしている「若手のホープ」に説得を試みます。

彼が現在の若手ホープ、焚沢功(たきざわこう)。

傍にはかつての逢田の恋人だった会長の娘さん。こうした状況も作品に奥行きを与えています。

ところが彼は大手ジムへの移籍に意欲的。
逢多の説得には一向、応じる気配は有りません。

ただ、彼はかねてより逢多に積年の思いを抱えていました。

というのも、焚沢が勝てば勝つほど、周囲の目が「過去、同じジムに所属していた幻のボクサー・逢多紋次郎」と比較するのです。
そしてその比較評価に、彼はいつも及ばずにいたのでした。

焚沢にとっては「幻のボクサー逢多」は目の上のコブ。うっとうしくてたまりません。
出来ることなら逢多を見つけ出してぶっ倒してやりたい、という気持ちをずっと抱いていました。
そして紆余曲折の結果、二人の間に次のような約束が交わされます。

ところが周囲は猛反対。
なにしろ、逢多が活躍していたのは2年も前の話。
方や焚沢は日本チャンピオンにもなろうとしている現役のプロボクサー。
結果は眼に見えております。

しかし逢多はそんな周囲のことは一向気にかけません、一戦に向けて必死で体を絞りぬきます。

そしてついに運命の日、誰も見ていない夜の小さなボクシングジムに、かつて逃げ出してしまった幻の一戦で着るはずだったガウンを身につけ、逢多は颯爽とリングに上がります。

ところが試合は予想通りの一方的な展開。逢多は若い力に圧倒され、滅多打ちにされます。

しかし逢多は持ちこたえます。

殴られても殴られても、立ち続けます。

何のために?

償いのため?

会長の恩義に報いるため?

許せなかった過去の自分を乗り越える為?

一人も観客のいない夜のリング。
男と男の意地が強烈にぶつかり合います。

そして試合はこの後思わぬ展開へ…。

ボクシングはその競技の性質上、意地や根性が嫌と言うほど根を効かせます。
もちろんテクニックや高度な駆け引き、スピード、パワー、スタミナ等の運動生理学が決着を左右するはもちろんですが、意地や根性、ネバーギブアップの精神といった心の強さが大きな要素になることはまず間違い有りません。

その、きわめて男臭いハートの部分だけを高純度に抽出したかのようなこの作品。
必読です!

勝負の行方が気になる方はサンデーうぇぶりで本編を読むことができます。

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