渡哲也さん主演の『紅の流れ星』がオモシロイ
前回、渡哲也さん主演の『東京流れ者』をご紹介しましたが、それとセットで是非おすすめしたいのが、この『紅の流れ星』。
公開時期も近く制作も同じ日活、渡哲也さん扮するガンアクションという内容や、タイトルの字面もなんとなく似ているため、なにかと『東京流れ者』と関連して語られることも多いこの作品。
がしかし『東京流れ者』がスタイリッシュなセンスに光っていたのに対し、こちらは独特な野暮ったさとシュール感がまぜこぜになった不思議な作品。その絶妙な味わいは愛してやまない魅力があります。
作品の見どころは以下3点。
- 主人公《ゴロ―》のおもしろさ
- ヒロイン・浅丘ルリ子さんの美しさ
- 全編を通じたシュールな作風
主人公《ゴロー》のおもしろさ
この作品の内容を超シンプルに説明すると、【殺し屋家業の『ゴロ―』が東京から神戸に流れて華々しく散る】というストーリー。
言ってみれば非常に完結明瞭な物語なわけで、そうなると登場人物のキャラが非常に重要な要素となってくるのですが、その意味で言うと本作の《ゴロー》の造形は紛れもなく異彩を放っております。
そのキャラ設定は「アウトローで気障で女たらしの殺し屋」…と聞けばありがちなステレオタイプではないかと思われるかもしれませんが、ただそれを【渡哲也さんが演じている】ということが大きなポイント。
渡哲也さんはそのフィルモグラフィーをみても分かる通り、どこか硬派で無骨な役どころが持ち味。なのに、なのになぜかこの作品においては、そうした渡哲也さんの魅力とはほぼ真逆の性質を備えた配役となっているのです。これは明らかに無理。
実際作品を見るとこのキャスティングの「無理感」はかなり早い段階で露骨にあらわれます。
臆面もなく気障なセリフを連発する五郎は不自然を通り越してコミカルでしかなく、それに対し真っ向から掛け合いをする役者陣たちも、どこかおかしな具合になってしまっており、ほとんど突っ込みどころしかないおかしな空気感が充満してしまっているのです。
ヒロイン・浅丘ルリ子さんの美しさ
浅丘ルリ子さんはコケティッシュな可愛らしさが魅力の女優さんでしたが、ある時期から超次元的な美しさを放つ女優に変身してゆきます。
この「紅の流れ星」が製作された時期は丁度その変身の絶頂期で、作中でも浅丘ルリ子さんの美貌をこれでもかと押し出すようなシーンがわんさか登場します。
オーラ全開の浅丘ルリ子さんの存在感はとにかく圧巻。映えに映えまくった鮮やかな衣裳とともに、我々の視覚を存分に楽しませてくれます。
全編を通じたシュールな作風
で、この作品では上述の通りの二人がメインキャストになるので、絵面がどこかおかしなことになってきます。
加えてこの作品は当時のフランス映画の流行だった“ヌーヴェルヴァーグ”という一連の作品群の影響を受けているらしく、要所要所にそれっぽいカットが見られます。
更にラストシーンなどはほとんど某有名フランス映画のパクリオマージュ。
ここまでくると作品全体を通じてなにかこう、突き抜けたような魅力のようなものを発揮してくるもので、郷愁をそそる音楽や、狙いすましたかのような雑味のある演出なども手伝い、何とも解釈のしようがないシュールな印象としてじわじわと記憶に残るのです。
昭和モダンの空気が色濃く漂っているので、懐かしさを感じる方も多いのではないでしょうか。
まとめ
やや言いたい放題言ってきましたが、なんだかんだ言って私はこの「紅の流れ星」が大好きです。
この時代は映画産業が盛んで、海外にも轟くような邦画の名作が数多く生まれていますが、その裏でこんなにファニイで愛くるしい映画があったことを、どれ程の人が知っているでしょうか。
先月、渡哲也さんが世に惜しまれつつ他界されましたが、だからこそ今是非、多くの肩に見ていただきたい作品です。
◇作品名:紅の流れ星
◇監督:舛田利雄
◇出演:渡哲也、浅丘ルリ子、宍戸錠
◇制作:日活
◇劇場公開:1967年10月
ところでこの『紅の流れ星』は、同監督による『赤い波止場』という作品のリメイクとしても知られています。
『赤い波止場』は、若き日の石原裕次郎さんのキレッキレの爽快さが光る傑作だったのですが、同じ監督が同じシナリオでリメイクをした結果、何故『紅の流れ星』が出来てしまうのかさっぱり分かりません。
鑑賞のポイントがまったく違っているのでどちらがいいとは言えませんが、両方見比べてみると実に興味深いので、こちらもおすすめです。
◇作品名:赤い波止場
◇監督:舛田利雄
◇出演:石原裕次郎、北原三枝、
◇制作:日活
◇劇場公開:1958年
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