私が好きな銀河鉄道999『透明海のアルテミス』

『銀河鉄道999』は少年・星野鉄郎が謎の女・メーテルに導かれて広大な宇宙の旅を続ける物語。

その中には数々の心に残るエピソードがありますが、その中から是非おすすめしたい一編をご紹介いたします。

それがこちら。『透明海のアルテミス』。

銀河鉄道999号が宇宙空間を行くと、アメーバ状の物体にまとわりつかれます。

アメーバ体は「この先にお母さんがいる」と訴えます。

そのうちに惑星ほどもある巨大なアメーバ物体に衝突、身動きが取れなくなってしまいます。

鉄朗とメーテルが降り立ってみると、そこは水飴のような透明な地面。

足元にはこれまで衝突したかに見える宇宙船がいくつも沈んでいます。

すると突如、地面から産声をあげながら、小さなゲル体が空に舞い上がってゆきます。

それはまるで大地から生まれた赤子が宇宙へと飛び立ってゆくかのよう。

そして次の瞬間、別の宇宙船がそこに衝突し、中から瀕死の女性が姿をあらわします。

彼女の体は半透明、いまわの際に自分は母のもとに帰ってきた、とつぶやきます。

鉄郎とメーテルが遺言通り彼女を地面に横たえると、その体が透明な地面に溶け込んで吸収されていきます。

この物体、宇宙にいくつもの生命を送り出す、母のような生命体だったのです。

しかし鉄郎とメーテルが感慨にふけっているのも束の間。

結局この物体は、銀河鉄道の管理局によって航路上の障害物とみなされ、振動波によって破壊されてしまうという、悲しい結末を迎えます。

母なる海から生まれた生命が、再び海へと還ってゆく物語。

思えば、私たち人間も、遙か遠い生命の始祖は海から生まれてきたと言われています。

また、我々人間世界を取り巻くものは全て、この地球から生み出されています。

ビルも森も、自動車や複雑な情報端末も、私たち人間さえも、元は全て地球にあるものから出来上がっています。

「自然が人間を生まないではおかなかったものは一体何なのだろうか。」と書いた小説家がいました。

「人は土から離れては生きられない 」いう名台詞を残した有名なアニメーション作品があります。

命について考えるとき、自然破壊や残酷な人類の歴史を考えるとき、または人間が宇宙に進出していくような壮大なニュースを聞くときに、私はこの物語がふと、頭をよぎることがあります。

なぜか、生命についての根源的な何かがこの物語の根底に横たわっているかのような気がするのです。

人はどこからきて、どこにゆくのか。

そんなロマンをふと思わせてくれる銀河鉄道999の一編。

是非、お勧めの一編です。

【DATA】銀河鉄道999『透明海のアルテミス』は 小学館ビックコミックスゴールド版:8巻/小学館業書版:5巻 /少年画報社ヒットコミックス版:9-10巻/に収録

ところで、同じような印象を残す作品として、安土萌さんの「海」という傑作短編小説があります。(星新一編:ショートショートの広場1に収録)

この『透明海のアルミテス』が好きな方は是非、こちらもお勧めです。

【DATA】ショートショートの広場1◇星新一 編◇講談社文庫

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